ご高齢の方を支える制度には、さまざまなものがあります。
遺言、成年後見、民事信託。どの制度にもメリットとデメリットがあり、どれを利用するか、もしくは併用するかは、ご高齢の方それぞれの事情により異なると思います。
その制度を使って何ができるのか、できないのか
大切なことは、どの制度を使うかではなく、まず 実現したいこと があって、どの制度を利用すれば実現できるのか、ということです。
たとえば
等々。これらの思いは多くの方に共通する面があると思いますが、それ以外にも家族を取り巻く事情によって、個別具体的に叶えたい思いは無数にあると思います。
それらの思いを実現するために、どういった制度設計が良いのか。
まずは思いをお聞かせいただき、ご一緒に今後のプランを検討して参りたいと思います。
遺言を残すことで、自分が亡くなった後の財産の処分方法を定める「点」の視点も大事ですが、ご自身の判断能力がなくなってから亡くなるまでの期間に、自分がどのように暮らしたいかを決める「線」の視点も大切です。
・認知症高齢者数の推計
現在65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症高齢者(予備軍含む)と言われていますが、平成27年厚生労働省の推計によると、平成37年には現在の10倍となり、高齢者の3人に1人が認知症高齢者という状況になると言われています。
・健康寿命
いわゆる「寿命」に対し、健康に生活できる寿命のことを「健康寿命」と言いますが、この寿命と健康寿命の差になる期間に備えることも重要です。
日本人の平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳ですが、健康寿命の平均は男性71.19歳、女性74.21歳です。健康でなくなってから亡くなるまでは男性で約9年、女性で約12年の期間があることになります。(出典:厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会 次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会)
「健康でない」の定義は、精神面の衰えだけでなく、身体的な衰えも含むことから、必ずしも各制度の利用が制限されるとは限りませんが、例えば介護保険利用者の「要介護者」のうち、認知症を理由とする人は20.5%と約5人に1人であることを考えると、そうなる前の対応が重要であると考えられます。
・各制度利用に必要な判断能力
民法上、遺言をするには「遺言能力」(事理弁識能力)といって、遺言の内容が理解できる能力が必要とされています。認知症になったからといって必ずしもこの遺言能力が認められないわけではありませんが、現実的には有効な遺言を残すことは難しいと思われます。
また、任意後見や民事信託は「契約行為」や「遺言」によることとなりますので、一定の判断能力が必要になります。こちらも認知症を発症して以降の利用は難しくなります。
健康な今なら利用できる制度も、ご自身の判断能力が衰えてくると、利用できなくなる制度もあります。将来のことを考えて早め早めの検討をお勧めします。
ご存じのとおり、遺言は将来自分が亡くなった時に備えて、主に自分の財産をどのように配分するか等を指定するものです。
判断能力の衰えに伴い、本人や親族等の申し立てにより、後見人等を選任します。選任された後見人等は、事務手続きを通じて本人を支援します。
判断能力が衰える前に、本人と任意後見受任者との間で、後見契約を結びます。一般的に、見守り契約と死後事務委任契約とがセットで締結されます。契約締結能力があるうちでないと利用できません。
任意後見同様、判断能力が衰える前に、本人と受任者との間で契約を結びます。遺言等で実現できない複雑な制度設計が可能です。契約締結能力があるうちでないと利用できません。